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なのはさんはフェイトさんのためならマジギレしちゃう。
フェイなの派なら逆なのかな、と思いますが、自分はなのフェイ派なので・・・。

それでは「貶されると耐えられない」




困った。
一体どうすれば良いんだろう。
一体どうすれば良かったんだろう。

椅子に深く腰掛け、相手を睨みつけたままのなのはを横目に回想する。

なのはに睨みつけられた男性は、まさに蛇に睨まれたカエル。
いや、その男性だけではない、遠めで面白半分で見やっていた野次馬もだ。
普段見せることのないなのはの様子に誰もが息を呑む。
平日の昼間、多くの人が行きかうラウンジで、剣呑さだけが先行する。


こうなった発端は、元からなのはに好意を抱いていた男性が私を貶すようなことを言ったところから始まる。
私となのはが結婚して以降、そういうことはぱたりとやんだと思われていたが、恐らくはキャリアのあるこの男のプライドがいまだに燻っていたのだろう。
専業主婦となって、管理局から離れていた私が今日、たまたま管理局にいたのでその燻っていた火種がまた燃え上がってしまったのか。

管理局のような、現場職と事務職に分かれる職場では、互いの仲が悪いというのは良くある話だ。

執務官、教導官、あるいは部隊長といった制服組。
参事官、副参事官、主事といった背広組。

互いに互いのプライドがあり、その間にある溝は非常に深く、そして広い。

入局間もないころから、仮にもエリート組としての道を歩んできたこの恰幅の良い男性は、『拒否される』ということに慣れていないに違いない。
生地だけは良いサイズのあっていない、オルタネイトストライプのダブルスーツ。
そしてそれと全く映えない、ペイズリーのプリーツの入ったネクタイ。
極め付けに言葉を失い、口を開けたまま佇むその様相は、ひどく滑稽だ。

しばし無言のまま、ラウンジはゼンマイの切れたオルゴールのように張り付いていたが、その状況に疲れたというようになのはが発言する。

「参事代行・・・。私への非難ならば、そのようなこともあるかと真摯に反省もしましょう。私への罵詈雑言ならば、笑って許しもしましょう。しかし、彼女のことを貶されては私は穏やかでいられない。何故なら、彼女が私に惹かれているのではなく、私が彼女に惹かれているからです。形は未熟であれ、そこに愛が芽生えたのです。大切な人を傷つけられて、尚、手元の剣を握らないほど、私は出来た人間ではありません」

同じテーブルについている私の手を引き寄せながらなのはがそういう。

なのはに対して何か言おうにも、若干薄められた眼がそれを許さない。
再び静寂。
なのはも言葉を続けなければ、参事代行も何も言い返さない。
私も何も言わなければ、野次馬も騒がない。

ダブルスーツも沈黙すれば、テーブルに置かれたスティックシュガーもアクションを起こさない。
ラウンジの隅に置かれた観葉植物も静観を決め込む。

とはいえ、この場合最初に騒ぎ出すものは決まっている。

野次馬の間に、ざわざわとした会話が波紋する。
その野次馬の目は、何となく参事代行を冷たく眺めているように見えた。

やがて参事代行は口を開きかけるも、それをやめ、きびすを返し、一歩歩き出すと直ぐに立ち止まった。

そしてこちらを振り向き何かを言おうとするも、またも取りやめ、ついにラウンジから出ようと歩みを速めた。


「・・・代行」

言葉を発したのは、またもなのはの方だ。
何も収まりかけた場面に手を加えることもないじゃないかと思うかもしれないが、そうしないのが高町なのはらしいとも言える。

「握った剣は、次は振るうことになります。おわかりですね」

念を押すようになのはがそういうと、参事代行は曖昧に頷き、速めた歩みを更に速め、足早にラウンジを後にした。

彼がラウンジから出ると、なのはは大げさに脱力してみせる。

「なぁんてね」

そのなのはの様子に、周りの野次馬も流れ解散と言った様子で散り散りになる。
なかには隣のテーブルでいつもどおりの昼食をとり始める局員もいる。

「あの、さっきはありがとう」

私が彼女にそういうが、彼女はあっけらかんとしている。
彼女は彼女で、普段見られない自分を見られたような気がしてなんとなく気まずいのかもしれない。
もっと穏やかに解決できただろうと、自分を窘めているのかもしれない。

「なのは、私は嬉しかったよ」

これも、真剣な顔で伝える。
嬉しかったのは本当のこと。
自分のことを護ってもらえて、嬉しくないわけがない。
一般の人が言う、人生での成功ということだけ考えれば、当然、なのはは私より件の男性と結婚したほうが『成功した』ということになるんだろう。
もちろん、なのははそんな話は即座に否定するだろう。
これは自惚れているわけでなく、なのははそういう人だ。
私と結婚できたこと以上の成功は存在しないと、そう言ってくれるだろう。

「フェイトちゃんを悪く言われると。つい、ね。良くないことっていうのはわかってるんだけど・・・」
気恥ずかしそうにいう彼女には、反省の色は見て取れても、後悔の色は見えない。
それもそうか。
逆にここで後悔されては、切った啖呵も報われまい。

「でもなのは、言ってることにちょっと間違ってるところがあったね」

驚く彼女に続ける。

「なのはが私に惹かれたんじゃなくて。私がなのはに惹かれたんだよ」

言うと、彼女は えぇー と困ったように笑う。
この話は平行線になるなと思っているのか、それともじゃあおあいこだねと思っているのか。
眉が下げられた顔からは推し量ることができない。

「フェイトちゃんがそんなことを言うなんて珍しいね」

なのはの腕がそっと伸びて、私の頬を掠める。
指先が軽く触れて、撫でただけ。
だけれど、なのはにそういわれると途端に恥ずかしさがこみ上げてくる。

あ、あぅ とかなんとか声にならない呻きのようなものが漏れないようにするのがいっぱいいっぱい。
こうやって私を恥ずかしがらせようとするのはなのはのずるいところだ。

「なのは、だけどやっぱり、剣は置いたほうがいいよ」
たとえ私のためでも、なのはに誰かを傷つけてほしくない。
それが元で、話が大きくなってほしくない。むしろこっちが本音か。

言ってることがさっきから断片的だなと自分でも思うが、別になのはは気にする様子がない。

「剣を持った以上は、次はないよ」
透き通るように青い瞳が私をまっすぐ見つめる。
射抜いたともいえる。
なのはは、時々こういう目をすることがある。
私が、駄目だといっても、それを聞こうとしないような。
無理にでも私が止めようとすれば、その私をもねじ伏せてしまうような。
堅い決意を感じる目だ。


少し考えて、私は両手をなのはにむかって突き出した。
なのはもいきなり出された両手に、少々戸惑っていたが、私がその手を軽く小刻みに上下に振ると、察したように、両手を出して私の両手に重ねる。

なのはの両手が、私の両手に重なっているのを確認して口を開く。

「これで、握った剣は地面に落ちちゃったかな?」

悪戯っぽく笑いかけると、なのははあっけに取られたような顔をして、ふっと笑う。

「フェイトちゃんは時々、面白いことを言うよね」

重ねられていた両手が離されて、なのはの両手が、私の手首を掴む。

「フェイトちゃんのおかげで、もしも次があっても、彼に振る剣はないね」

次なんてありえないとおもうけど、と軽く付け足す。
なのはにぐっと掴まれた手首を引かれると、おのずとなのはと顔の距離が近くなる。


その様子に、再び周りの目がテーブルに集まる。
今回はむしろ、好奇の目という感じだが。

『ここ管理局のラウンジだよ?』『周りの目が・・・』なんと言えばいいんだろう?
いや、何ていっても無駄か。彼女の真剣な眼差しが。そして何より彼女の瞳に映る私の顔が、恥ずかしい話だけれど、それを望んでいる。
ただ、このことが知り合いに伝わるとまたメールやらなんやらでからかわれるんだろうな。
このあいだ教導官とラウンジで・・・なんて。

時代が時代ならはしたないと思われるかもしれないが、この状況ではそれはないだろう。
周囲の目も期待に満ちている。


ただ、迫る愛があまりに熱く。
それが目を焦がす前に、私は静かに目を閉じた。

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2013.04.29 / Top↑
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